両親やきょうだいなどが所有する財産に事故物件が含まれており、相続が発生したらどうしようと不安を感じている方はいませんか。
事故物件を相続するか否か決めるための基準などを把握しておけば、事故物件の相続が発生しても落ち着いて対処できます。
そこで今回は、事故物件と相続税との関係性や相続可否の判断基準、相続したあとで将来的に起こり得るデメリットを解説します。
事故物件と相続税の関係性
たとえ相続する不動産が事故物件でも、一般の不動産と同じく相続税がかかります。
事故物件とは
事故物件とは、自殺や他殺、変死などが過去に発生した不動産を指します。
「訳あり物件」と呼ばれる不動産も、事故物件と同じと考えて差し支えありません。
不動産業界では、事故物件を「心理的瑕疵物件」と呼ぶことが多いです。
瑕疵とは、不具合や欠陥を指す言葉で、心理的瑕疵は目視で確認できなくても、心理的に悪影響を与える可能性がある不具合や欠陥を意味します。
心理的瑕疵は、個人の感じ方に依存するため定義が難しいですが、一般的には「事前に知っていれば購入しなかった」と思う物件が心理的瑕疵物件、すなわち事故物件と呼ばれます。
事故物件を相続すると相続税が課される
仮に、心理的瑕疵がある事故物件であっても、相続した不動産が一定の条件を満たす場合は、相続税を納めなければなりません。
納めるべき相続税額は、不動産の相続税評価額をもとに計算されますが、税金の計算式には事故物件か否かは関係なく、原則として通常の不動産と同額の相続税が課されます。
事故物件でも相続税額が変わらない理由は、税額の計算に用いられる相続税評価額が市場価値と異なるためです。
つまり、不動産を相続した場合、事故物件であっても、心理的瑕疵がない不動産と同額の税負担が課されます。
ただし、相続する不動産が土地の場合、事故物件であることを理由として不動産取引に悪影響が生じていると判断されれば、相続税評価額が10%控除され、相続税の減額が可能です。
相続税評価額の控除可否は、市場価値の下落幅や価値が下がった状態の継続期間など、複数の要因を考慮して判断されます。
相続予定の不動産が土地であり、なおかつ事故物件である場合は、最寄りの税務署または税理士に相談し、相続税評価額の控除対象になり得るかを確認することをおすすめします。
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事故物件の相続可否の判断基準
事故物件を相続するかどうか迷った場合、対象の不動産が収益を生み出せるかどうかに焦点をあてると、判断がしやすくなります。
具体的な判断基準は以下の3点です。
●収益につながるなら相続
●活用できなければ処分
●相続による負担が大きいなら相続放棄
各判断基準について確認しましょう。
判断基準1.収益につながるなら相続
事故物件を相続したあとに収益が見込めるのであれば、そのまま相続しても問題はありません。
たとえば、賃貸物件として活用した場合、一般の賃貸物件と同様に借主が見つかる可能性が高ければ、相続する価値があると判断できます。
収益を上げられるか確認するためにも、相続の前に賃貸管理を担当する不動産会社に相談し、事故物件であることと賃貸物件として収益が得られるかどうかを確認してください。
また、相続する財産が事故物件だけでない場合は、相続する方向で検討することが適切です。
相続放棄を選択すると、事故物件を含めてすべての財産を放棄することになり、多額の預貯金や現金が遺されていた場合でも相続できなくなります。
さらに、売却によって利益が得られる可能性がある場合は、相続後に売却したほうが有利です。
判断基準2.活用できなければ処分
事故物件を相続しても、自宅として使用する方がおらず、賃貸物件としても活用できない場合は、相続後に早期に処分することが適切です。
不動産は所有しているだけで固定資産税が発生し、一般の不動産と同様の金額を毎年納める必要があります。
さらに、空き家として放置され、自治体から特定空家に指定されると、固定資産税の軽減措置が解除され、納税額が増加するほか、解体費用を請求される可能性もあります。
事故物件が土地である場合は、固定資産税評価額の10%が控除の対象となりますが、土地として活用できない場合は出費が増えるだけであり、所有を継続するのは非効率です。
住宅としても賃貸物件としても利用が難しい場合は、処分するのが妥当です。
判断基準3.相続による負担が大きいなら相続放棄
相続対象に負の財産が含まれている場合は、相続放棄を選択することが適切です。
相続する財産に被相続人の借金や滞納していた税金が含まれている場合、相続人がそれらの返済および納税義務を負うことになります。
被相続人が知人や親族の借金の連帯保証人であった場合も、相続人は連帯保証人としての責任を引き継ぐことになります。
さらに、相続を承認した後に負の財産が判明した場合でも、その財産を相続し、返済義務を負うことになるでしょう。
相続後に後悔しないためにも、相続が発生した際は弁護士などに相談し、財産の内容を確認したうえで、判断基準に基づいて意思決定をおこないましょう。
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事故物件の相続における将来的なデメリット
事故物件を相続すると税負担だけでなく、将来的にさまざまなデメリットが生じるおそれがあります。
デメリット1.空室リスクの高さ
相続した事故物件を賃貸物件として活用する場合、空室リスクが高くなりやすい点がデメリットとなります。
たとえ立地や設備が良好であっても、過去に殺人事件や自殺があった不動産は、借主から敬遠されやすく、入居者が集まりにくい傾向があるでしょう。
賃貸物件は、借主が見つからないと収入が得られず、支出のみが発生するため、空室期間が長引くほど経営が悪化します。
賃貸経営において、事故物件であるという事実は大きな不利な要因になると考えられます。
デメリット2.家賃の値下げ
賃貸物件として活用する場合、家賃を値下げしなければならない可能性がある点も、将来的なデメリットの一つです。
事故物件は、心理的瑕疵の問題により入居希望者が集まりにくく、賃料収入を確保したい貸主は、家賃を下げてでも入居者を確保しようとする傾向があります。
家賃を値下げすると、たとえ借主が見つかったとしても、当初の想定より収入が減少します。
賃料収入を固定資産税などの支払いに充てる計画であった場合、収入の減少により不足分を自己負担する可能性があるでしょう。
事故物件を賃貸経営に活用する場合は、入居者が確保できるかを慎重に見極めたうえで判断することが重要です。
デメリット3.空き家の維持管理
事故物件を空き家として所有する場合、維持管理にかかるコスト負担も大きな問題です。
建物は築年数の経過とともに老朽化が進み、管理を怠ると外壁の剥がれや天井からの雨漏り、柱の腐食など、劣化が深刻化します。
劣化が進行すると、地震や台風などの自然災害によって倒壊するリスクも高まります。
さらに、台風で建物から剥がれた外壁の一部が飛散し、隣家や通行人に被害を与えた場合には、損害賠償請求につながる可能性もあるでしょう。
トラブル対応だけでなく、経済的にも大きな負担を負うおそれがあることを認識しておく必要があります。
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まとめ
事故物件は相続税の対象であり、納付額は一般的な不動産と同額です。
相続するか否か決める場合は、需要の高さや活用方法など、判断基準を参考に検討してみてください。
空室リスクや空き家による被害など、将来的なデメリットも理解したうえで、事故物件を相続するか決めたほうが良いでしょう。