土地や建物を相続した際には、名義を新しくするために「相続登記」の手続きが必要です。
これまでは、相続登記をおこなうことが法律で義務づけられていませんでしたが、今後は法改正により、相続登記を一定の期間内におこなわなければならないルールへと変わります。
この記事では、相続登記が義務化された背景やおこなわなかった場合の罰則、相続登記手続きの流れを解説します。
不動産の相続登記が義務化された背景とは?
2021年4月21日の民法・不動産登記法改正により、相続登記は申請しなければならないものとなりました。
改正後の新しいルールは2024年4月1日から施行され、その日以降に相続が発生した不動産は、決められた期間内に相続登記の申請が必要になります。
改正前に発生した相続についても同様です。
相続登記が義務化された背景
相続登記義務化の背景には、所有者がわからない土地が増えていることがあります。
「所有者不明土地」とは、不動産登記簿などから所有者をすぐに特定できない、あるいは特定はできても連絡がとれない土地のことです。
本来、不動産は正しい所有者を明確にしておく必要があります。
不動産を相続した際に相続登記をしないままでいると、すでに亡くなった方が所有者として記録されたままになったり、相続人が不明で連絡がとれなかったりします。
その結果、街を整備しようとしても、所有者と交渉できずに計画が進まないことが増えているのです。
こうした問題を解決し、スムーズに所有者と話し合いをおこなって不動産を有効活用できるようにするため、相続登記を義務化することになったのです。
相続登記の義務化が求められる理由
所有者不明の土地問題を解決するため、2021年4月に「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。
相続登記や住所変更登記の手続きを簡単かつ合理的におこなえるようにし、所有者不明土地の発生を防ぎ、土地利用を円滑に進めることが期待されています。
主なポイントは以下のとおりです。
●不動産登記制度の見直し:手続きをスムーズにおこなえるようにし、所有者不明土地の増加を防ぐ
●土地を手放すための新制度:不必要になった土地を手放せる仕組みを整え、管理できない土地を減らす
●土地利用に関するルールの改正:土地利用ルールを見直し、公共事業や民間取引を円滑に進める
相続などで取得した不動産をうまく管理できないケースに対応するため、土地所有権を国庫に帰属させる制度が設けられました。
さらに、所有者不明で管理が行き届かない土地や建物に対しては、利害関係者が地方裁判所に申立て、不動産の管理人を選任できる「財産管理制度」が整備されました。
これにより、所有者不明土地が公共事業や不動産取引の障害にならないようにする狙いがあります。
不動産の相続登記をしないと罰則がある?
義務化された不動産の相続登記のポイントや罰則は、以下のとおりです。
①相続登記の申請が義務化される
相続登記は、「不動産を相続したこと」と「相続財産に不動産があると知った日」から数えて3年以内に完了させる必要があります。
たとえば、相続が発生したことを知っていても、そのなかに不動産が含まれていると知らなければ、その時点では義務は発生しません。
あくまで、不動産の存在を知った日から3年以内です。
申請期限を過ぎても相続登記をおこなわなかった場合、10万円以下の過料(罰則)が科される可能性があります。
なお、相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。
つまり、以前に相続した不動産についても、2024年4月1日以降は、相続登記をおこなわなければなりません。
②相続人申告登記の新設
相続登記が義務化されるにあたり「相続人申告登記」と呼ばれる、より簡便な手続きが利用できるようになりました。
相続人申告登記の制度では「相続が発生したこと」と「自分が相続人であること」を登記官に申告すれば、その時点でいったん相続登記をおこなったものとみなされ、内容が登記簿に記録されます。
ただし、相続人申告登記はあくまで「相続があったことと相続人であることを知らせる」ための手続きで、相続登記(不動産の名義変更)とは異なります。
③登記名義人情報(氏名・住所)の変更登記義務化
相続登記の義務化にあわせて、不動産の所有者が氏名・住所(法人の場合は名称)を変更した際、変更内容を登記簿に反映させることも義務付けられました。
相続登記の義務化と同様の流れで導入され、不動産所有者の情報を常に最新の状態に保つことが目的です。
具体的には、氏名や住所、法人名が変わった場合、変更があった日から2年以内に登記の更新が必要になります。
変更登記義務化の施行は2026年4月1日からです。
また、2026年4月1日以前の変更についても、変更の登記をしていない場合は、2028年3月31日までに変更の登記を申請しなければならないとされました。
なお、正当な理由なく期限内に変更登記をおこなわない場合は、5万円以下の過料を科される可能性があります。
不動産の相続登記における申請手続きの流れとは?
不動産の相続登記は、相続人本人が必要な書類を準備し、書類作成をおこなえば、専門家に依頼しなくても個人で申請できます。
申請の流れは、以下のとおりです。
①必要書類を集める
まずは申請に必要な書類を揃えます。
相続のケースによって必要書類は異なりますが、基本的には次の5種類を用意します。
●被相続人(亡くなった方)の「出生から死亡まで」の戸籍謄本
●被相続人の住民票の除票
●相続人の戸籍謄本
●相続人の住民票
●固定資産評価証明書
とくに重要なのが「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」です。
被相続人が過去に何度か転籍(本籍を移したこと)がある場合、転籍先ごとにさかのぼって、各自治体で戸籍謄本を取り寄せる必要があります。
②相続人を確定する
たとえ「親から子へ」のわかりやすい相続であっても、戸籍を丁寧に確認していくと、家族が知らなかった相続人が見つかるケースもあります。
そのため、相続手続きでは、他に相続人がいないかどうかを戸籍謄本などの書類でしっかりと確認したうえで、誰が遺産を受け継ぐのかをはっきりさせておくことが必要です。
また、相続人が複数いて遺言書がない場合は、遺産をどのように分けるかを話し合い「遺産分割協議書」を作成します。
作成した協議書には、すべての相続人が署名・押印しなければなりません。
③相続登記申請書を作る
法務省のウェブサイトから、相続登記用の申請書フォーマットをダウンロードし、必要事項を記入します。
記入する内容は、不動産の所在地や相続人の氏名などにくわえ、登録免許税の金額も含まれます。
登録免許税は自分で計算して記入する必要があるため、計算方法をしっかり確認してから記入しましょう。
④登録免許税の支払いと書類提出
登録免許税は「収入印紙」で納付します。
少額であればコンビニエンスストアでも購入できますが、金額が大きい場合は郵便局や法務局で必要な額の収入印紙を入手する必要があります。
購入した収入印紙は、相続登記申請書に貼り付けましょう。
完成した申請書類は管轄の法務局へ持参するか、書留郵便で送付して手続きを完了させます。
相続人が複数いる場合や、被相続人が何度も戸籍を移していて収集が難しいケースでは、手続きが複雑になることもあります。
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まとめ
不動産の相続登記が義務化された背景には、所有者不明土地の問題があります。
相続登記を期限内に申請しなかった場合、10万円以下の過料が科される罰則もあるため、注意が必要です。
申請の手続きは、必要書類を収集し、相続人を確定させ、申請書類を作成して書類を提出する流れで進めます。